平成18年度 国指定史跡秋常山古墳群 保存整備事業概要

能美市教育委員会

「国の史跡等総合整備活用推進事業」の採択を受けて事業着手した秋常山古墳群保存整備事業は平成18年度に3年目を迎えました。

初年度の平成16年度は2号墳主体部の発掘調査と1号墳墳丘上の雑木整理伐工事および2号墳西側法面の造成工事を、平成17年度は1号墳後円部北東側およびくびれ部の発掘調査と1号墳後円部2段目北側の修復工事ならびに2号墳西側法面の造成工事を行いました。

 今年度は下記のとおり発掘調査と保存整備工事を実施しました。

【発掘調査】

 1号墳の墳形復元データを得るため、
後円部2段目の東側から南側にかけて
トレンチ調査を行いました。

 平成
16年度の調査で良好な葺石の
遺存状態が確認された後円部2段目東
側トレンチをさらに南側へ拡張し、葺石
の続きを追求しました。


 一部で撹乱を受けてはいたものの、
いくつかの原位置を保つ基底石が検出
され新たなデ―タを得ることができました(写真1)。
後円部2段目東側

さらに、この後円部側から南側のくびれ部にかけて
のつながりを明らかにするため後円部東南側でトレン
チ調査を行いました。その結果、原位置を保つ葺石の
一部が検出され(写真2)、2段目裾のつながりを明ら
かにすることができました。

【保存整備工事】

 1号墳では、後円部最上段の北側から西側にかけて
修復・盛土保存工事を実施しました。これまでの発掘
調査で得られたデータから墳形を復元したうえで、
後世の畑造成などで改変された部分に切土や盛土を
施し、遺存状態が良好な箇所には厚さ
30cmの盛土で
保護を行いました。盛土の表面にはヨモギ等の和種を
中心とした草本類で植栽しました。

後円部2段目東南側

2号墳の埋葬施設は過去の発掘調査によって木棺の周囲を粘土で被覆する簡略化した粘土郭であったことが判明しています。保存整備では調査で発掘された当時の状況をそのまま見学できるよう過去の土採りで削平された墳丘部を利用して展示施設を設ける計画があります。そのために今年度は調査時に行った埋葬施設の型取りから、成形・彩色等を行いレプリカの作成をしました。

 さらに、2号墳の埋葬施設に副葬されていた大刀・刀子・竪櫛や墳丘の西側裾部から多量に出土した鉄製農工具類をこれ以上劣化が進まないよう保存処理を施しました。合わせて、埋葬施設の副葬品については展示施設のためのレプリカ作成を行いました。

また、平成16年度から引き続いて2号墳西側法面の擁壁造成工事を行いました。過去の土採りで垂直に削り取られた崖面を3段の擁壁で保護する計画になっており、今年度は中段の造成工事を行いました。



〜平成19年度の保存整備計画〜

 1号墳は後円部最上段東側の墳丘修復工事および葺石の復元工事を、2号墳は西側法面の擁壁造成工事、埋葬施設展示施設の設置、埴輪のレプリカ作成を予定しています。

後円部上段の保存整備

inserted by FC2 system