平成27年度 羽咋市 史跡活用事例報告


◇史跡「吉崎・次場遺跡」 弥生公園を活用した体験講座事業


 

 吉崎・次場遺跡は、羽咋市中央部に位置する「邑知潟」の潟湖南岸にある弥生時代の低地の大規模拠点集落です。
 弥生文化といえば「稲作」と「青銅器文化」が知られますが、能登にも弥生文化がいちはやく伝わったことを確かに教えてくれる重要遺跡として、昭和58年に国の史跡に指定されました。


 稲作文化の伝播を伝える資料として、鋤・鍬・木槌などの水田耕作に伴う木製品のほか、籾圧痕のある弥生土器片など、多数の資料が出土しています。
 また、青銅器文化を伝える資料として、「内行花文鏡(完形品)」と「シチ鏡片」が出土しており、これらを用いた祭祀儀礼が執り行われていたと考えられます。
 このほか、青銅器鋳型片も出土しており、遺跡内で金属製品の製作をしていたことも確実視されています。

 集落内には、大溝遺構も検出されており、大量の土器と木製品が出土しました。
環濠としての機能のほか、邑知潟へ通じる水路としても大溝遺構が張り巡らされ、利用されたものと考えられます。

 能登地区では、こうした弥生時代の生活像が通史的かつ総合的に把握できる大規模拠点集落は他に例がなく、貴重な存在です。


 羽咋市では、この史跡の価値を広く伝えるため、平成11年に「吉崎・次場弥生公園」を整備・オープンし、復元建物として大型平地式建物、平地式建物、掘立柱建物(高床倉庫)を整備したほか、大溝遺構の位置を園路として地上表示しています。さらに、ドームトンネル状のガイダンス施設をエントランスとして設置し、来場者の導入学習のための「タイムトンネル」として位置づけています。





 史跡公園では、これらの施設を活用する具体例として、以下の取り組みを行っています。

1、学校での弥生時代学習へのガイド

 小学校6年生の社会科の歴史学習では、4月末から5月前半にかけて弥生時代の学習に入ります。この時期にあわせて、学校と調整し遺跡学習と弥生人体験を組み合わせた講座授業を行っています。
 学芸員が各学校の校区にあわせた弥生時代の遺跡を題材にして、弥生文化について説明し、吉崎次場遺跡でのようすと史跡としての重要性について解説したのち、「勾玉作り」「火おこし体験」などのメニューを行います。
 学校カリキュラムとの連携が効果を挙げており、市域のほぼ全ての6年生児童が羽咋の弥生文化について史跡での体験活動を通じて学習しています。とくに、羽咋市歴史民俗資料館での出土品の展示見学や博物館を知ってもらうためのバックヤードツアーなどと複合させての授業とすることで、より総合的な内容とするよう心がけています。

 




2、年間常時受付している弥生人講座

 この勾玉作りや火おこし体験などの体験メニューは、学校連携だけではなく、羽咋市歴史民俗資料館での通年体験メニューとしても実施しています。
 学校での学習時に火おこしが上手くいかなかった子供たちや手ごたえを得た子供たちが、放課後や休日に誘い合って再挑戦に来るなど、学校以外の場で史跡や博物館を活用する場面も見られます。



3、弥生時代の生活体験講座の総合メニュー 「弥生まつり」

 毎年、夏休み期間を利用して、弥生時代の生活体験講座メニューを網羅した「弥生まつり」を開催しています。子供たちを対象としていますが、大人でも楽しめる内容としており、親子で楽しみながら取り組めるよう心がけています。
 「羽咋の弥生人になろう」とよびかけ、勾玉づくり、火おこし体験のほか、弥生土器作りと野焼き体験、土器による炊飯と試食会、古代衣装の試着、弓矢体験といった総合体験を目指しています。
 
  

 
 



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